DONZOKO

秘境へようこそ

水、池、川

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水が好きだ。飲むのも、見るのも。

 

田舎育ちなので長いこと美味い水を飲んできた。神戸の水は臭くて飲めない。

 

2リットルのペットボトルを3日くらいで消費してしまう。油断すると部屋が小学校のリサイクル室じみた光景になる。

 

サントリーの奥大山がやはり良い。トップバリュの薄黄色のパッケージは何だか飲んでいると侘しさで不安になる。味の違いなんざとても分からんが。

 

散歩していて川に行き当たるとしばらく眺めてしまう。小中高と、帰り道には必ず小川があった。ずっと眺めて帰っていた。女の子と手をつないで帰ったことなんてついぞ一回もなかった。一回くらいやっときたかった。

 

大学からの帰り道には川がない。かといって別に不満があるわけではない。由緒正しそうな教会、由緒が正しくなさそうな宗教施設、入ったことのない洒落た珈琲屋、遠くに霞む神戸市街を見やりながら帰るのも悪くない。

 

とはいえやっぱり川があればもっと良かったろう。時々わざと遠回りして川沿いを歩いて帰ることがあるくらいだ。海も一応あるが、歩いていくには遠すぎる。

 

グーグルマップで池やら湖を探すのも好きだ。へぇ、こんなとこにでっけー水たまりあんじゃん。探すだけで実際に足を運ぶことはないのだが。

 

京都の深泥池には一度行ってみたい。一度でいい。名前がいい。みどろがいけ。そりゃ心霊スポットにもなるわ、そんなネーミングじゃ。もう文字列からしてアヤしい空気が漂っている。一応、学術的に貴重な池ではあるらしいのだが。生物群集とかはどうでもいいので、実際どのくらいきな臭い池なのか確かめてみたい。

 

今度夕暮れ時に行ってみるか。雰囲気だけ感じて帰りたい。異界の類いと遭遇するのはまっぴら御免である。流行りの異世界モノは紙面の上だけでいい。

 

 

池と言えば、地元に御池というのがある。”おいけ”ではない。”みいけ”だ。火山湖。例によって心霊スポット扱いを受けている。さもありなんという感じだ。周りが鬱蒼とした森に囲まれているから、暗い。天候に依っちゃあもっと暗い。そんで深い。水深93.5m。日本の火山湖で最深だ。そんでもって太平洋戦争時の武器やら戦車やらが沈められている。きな臭いどころではない。確定事項である。ちなみに神武天皇がちっさいときにここで水遊びをしていたらしい。たぶん嘘だ。

 

近くには大浪池というのもある。おおなみのいけ。これも火山湖。水面標高1241mであり、常時水を張っている火山湖としては日本で最も高い場所にあるらしい。さっきから地味な日本一だ。水質は強い酸性(pH=5.20)らしい。昔普通に素手で触ったがなんてことはなかった。ちなみに酸性なのにフナが住んでいる。ほんとどこでも生きてんなこいつら。

 

ここは神龍が住んでいるという伝説がある。確かにまぁ厳かな雰囲気が漂っている場所だ。小学4年のとき、親父とここへ遊びに来た。当時のアタシは「水中に泥・砂を投げ入れてそれが溶けるように沈んでいくのを眺めるのが好き」という大変な性癖の持ち主だった。んで泥を投げた。神龍の住むこの池へ。何度も投げた。すると親父が「やめとけ。たぶん悪いこと起きっから。」なんて真顔で言い出した。やめろよォ、怖くなっちまうだろ。

 

神聖な感じはするが嫌な感じはない。曇りの日はちょっと怖いが。いまの季節にいくと、大空とそれを受けて青々とした池、池を縁取る紅くなっちまった楓、漆、櫨なんかでそりゃあもう風光明媚だ。

 

 

最近、新幹線で東京にいくことが何度かあった。名古屋からが長い。まず名古屋から豊橋までが長い。そこから浜松までが、なんでか知らんがやたら長い。そんなに距離はないはずなんだが。体感で遅いのか、実際に新幹線のスピードが落ちているか。時間を測ったことはないから分からないが。浜松に差し掛かるとでかい川が見えてくる。「ほーん、あなたの名前は何ざんしょ」と思いながらグーグルマップを起動。現代は便利だ。GPS万歳、電波万歳。名は天竜川。名前がかっこいい。九頭竜川の次くらいにかっこいい。天竜川の流域は急峻な地形で有り、昔から「暴れ川」「暴れ天竜」と呼ばれているらしい。クローズみたいでかっこいいが、地元住民にはいい迷惑だろう。そういや九頭竜川も「崩れ川」とか呼ばれてたような。

 

”竜”の文字が付く場所は水害が多い気がする。鹿児島の竜ヶ水なんてその典型だ。竜、蛇なんかの字がついている場所にはあまり住みたくない。あまり考えだすと日本中住めなくなってしまうだろうが。でもまぁ、土地に着けられた名前ってのは面白い。竜なんて字があてられるほどだ、昔から水害が多かったんだろう。そこに古くから住んでいた人々の警告が名前という形になって表れている気がする。怖いがロマンを感じる。

 

 

数年前に、大阪、淀川にまつわる面白い話をネットで見たことがある。淀川といえばヌートリアが住み着いてしまっていることで有名だ。川近くに住んでいる、ホームレスだか浮浪者だか何だかわからないが、とにかく得体のしれないおじさんがヌートリアを連れているらしい。そして口を開くと「このニホンカワウソはワシが育てた」と主張するらしい。絶滅してしまった貴重な日本固有種の名を、あろうことか特定外来生物を使って騙ろうとは。最高にクールだ。これぞ諧謔である。そのおじさんは本気で言っているのかもしれないが、自分もいつかこんなジョークを飛ばせる人間になりたい。

 

笑の都、大阪の成せる技か、地元住民に淀川の話を聞くと面白い話がボロボロでてくる。あなたの横にいる大阪人もきっと淀川にまつわる伝家の宝刀みたいな話を持っていることだろう。テナガエビを捕まえて「イセエビ!イセエビ!」なんてはしゃぐ子供を見たことがある。たぶん淀川には嘘つきが多い。面白い川だ。川に人格が宿って喋ることが出来るような装置が開発されたとしたら、真っ先に淀川に着けてほしい。きっと24時間面白いエピソードを語ってくれることだろう。そんな装置は、たぶん数千年待っても開発されんだろうが。