DONZOKO

秘境へようこそ

化味調カミソリ餃子

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 ふとした瞬間に餃子が食いたくなることがしょっちゅうある。頭に餃子が浮かぶ。餃子の口になる。この「〇〇の口になる」という現象が持つ身体・精神への強制力は凄まじい。〇〇の口になると、直前まで手にしていた本、ゲーム、スマホ、ペンなどを放り出して部屋の外をでる。大脳新皮質が溶け落ちて、人間らしい思考が不可能になる。 それに代わって、大脳辺縁系が「Gyoza」を意味する電気信号で溢れかえって、本能レベルで餃子以外のことが考えられなくなる。餃子餃子餃子。そのうち指の関節の皺が餃子の皮を閉じた部分に見えてくる。全身餃子人間になる。

 

モンベルのオタクくさいフリースのジャンパーの上からユニクロのパーカーに、ディッキーズのズボンを穿いて外に出る。ドラッグストアで400円のスリッパを履いて、顔には−10という度の強さで顔周辺の時空が歪んでいるかのような錯覚を引き起こす、アセテートで鼈甲を模した、ニセベッコウメガネをかけていこう。お洒落のおの文字もない恰好が設けられたドレスコードだ。これから向かうのは安い餃子屋であって、洒落っ気のあるイタリアンではないのだ。チェスターコートやパタゴニアを着てセルロイド製のクラウンパントのメガネをかけていくのは絶対にやめよう。入口に設置されているオシャレセンサーが反応して入店できなくなってしまう。

 

餃子屋まで距離にして200mほど。駅前にはカレー屋、ラーメン屋、牛丼屋など種々雑多な食い物屋が蔓延っているが、今は餃子以外に用はない。餃子以外のものは食いたくないのである。もしこの状態のときに知り合いのフランスかぶれの美食家に呼び止められ(そんな知り合いはいない)、「どうです、私の自宅でフォアグラでも」と誘われたらとっても怒ってしまうだろう。普段考えもしないフォアグラ生産の問題点を倫理的・人道的側面から否定しまくり、「その辺の沼でモォモォ鳴いているウシガエルをひっとらえて”ジビエ”とか称して一人で食っとればよかろう、それでカエルに巣食う、うにうにしている虫に寄生されて腹を下してしまえ。それでヴェルサイユ宮殿よろしく自分の糞を愉快そうに庭にぶちまけていろ」とか言ってしまいそうである。

 

何のことはない餃子の王将に入る。ここの餃子は美味い。添加物にまみれた味がする。カウンターに座り、餃子定食をダブルで頼む。ワタクシの地元は、ドンキホーテやコメダ珈琲店ができただけでお祭り騒ぎになる自動改札機のないような田舎であり、餃子の王将も当然なかった。大阪王将はあったが。であるからして、王将に入ったのは大学に入ってからが初めてだった。最寄りの王将以外に入ったことがないので、他の店舗の餃子定食がどういう構成かは知らないが、最寄りの店舗では餃子、白飯、中華スープ、唐揚げ、御新香で構成されてある。

 

店に入るとすぐ、馴染みの中年女性店員のぶっきらぼうな接客が始まる。

 

「何名様一名様カウンターどうぞ」

 

「何名様?」と「一名様(ですね)」の間にインターバルが全く設けられない。何年も働いてらっしゃるのだろう、無駄を省き、磨き上げられた水流の如きルーティンである。ロッベンのカットインシュートみたいだ。厨房が見渡せるカウンターに座る。餃子の焼き場担当のおっさんがコゲをガシャンガシャンガシャンと剥がしている。おっさんのガシャンガシャンと「コーテル」だとか「ソーハン」だとかのよく分からん用語でオーダーを通す店員の声が響き渡る。

 

出来上がった定食がカウンターに置かれる。タレ皿に当然タレと、100均に置いてありそうな恐らくシャンプーとかボディソープ用のディスペンサーに入れられたラー油を入ぶちまける。5回くらいシャコシャコとプッシュしよう。辛い方が好きだ。ほとんどラー油で赤くなってしまったタレに餃子ちゃんを付け、口に運ぶ。エッジの効いたカミソリみたいな味が口内を駆け巡る。さっき溶けちゃった大脳新皮質がなんとか配置に戻ろうとゆっくり脳の壁を登っていたところ、餃子を食った瞬間またバシャーッと溶け落ちる。食っても口の中は怪我しないが確実に健康を蝕む類いの味だ。ゲーム・GTA4でジェイコブという男をバーガー屋に連れていくと「健康には最悪だが、魂には最高の食い物だな」というセリフが飛び出す。そういう食い物は概して美味い。普段は主役を張っている唐揚げも、今回ばかりはうやうやしく隅でじっとしている。

 

餃子の王将は多くがチェーン店であり、店によって味の当たり外れがあるらしい。「王将 美味い店 特徴」とかでググると、客におっさんが多いとか、厨房に若いバイトが立っていないとか、床が油でてらてら汚れていないとか、色々書かれている。とりあえず頼んで食えばいいではないかと思うのは自分だけだろうか。あ、御影店は美味いらしいです。今度行こう。

 

化学調味料はクセになる。ひょっとして俺が求めているのは餃子ではなくて化味調ではないだろうか。思い返せば大脳新皮質を溶かす食い物は餃子、マクドナルド、すき屋のチーズ牛丼、セブンイレブンの根っこが全部同じ味のスパゲッティ等など、絶対に化味調が入っていそうなものばかりである。最近、化学調味料を「うま味調味料」と称する向きがあるが、死ぬほど気に入らない。分かりやすくていいではないか、「化学調味料」。うま味とかいって健康に悪そうなイメージをかき消そうとしてるんだろうが、こっちは健康を害すのも一つの文化としてものを食いに行っとるんだ。「虫ケア用品」にしても同じだ。虫を殺しておいて何がケアだ。ケアなどと言ってしまっては虫を文字通りケアしてしまうと思い込んでしまう。アースジェットをカブトムシのゼリーか何かと勘違いして買ってしまう子供がいるかもしれない。さぁカブトムシさんご飯だよと思って噴射された白い霧がカブトムシを殺す。名前に秘められた警告を新しい名称で隠してしまうと悲劇が起こる。2014年の広島の土砂災害がいい例だ。

 

殺虫剤を製造する企業は、虫が死滅してしまっては仕事がなくなる。彼らを殺した金で自分たちは生活している。殺虫効果を追い求めながらも、飯を食わせてもらっている恩人ならぬ恩虫を殺すことへの贖罪。虫たちへの愛と自分の仕事への情熱。そういうアンビバレントな感情を経て、「虫ケア用品」という言葉が生み出されたのだろうか。納得がいった。相手の気持ちを考えるのは大事だ。ちなみに自分は普段から殺虫剤にお世話になっている。蚊を叩いて殺すのは骨が折れるからだ。キンチョールが好きだ。ゴキブリは死体を見ないと安心できないので、絶対に物理で殴りに行くが。

 

とっても話が逸れた。自分は分かりやすい味が好きなのだろう。ラーメンハゲこと芹沢に言わせるとこの「頭に舌のついたボンクラ」側の輩なのだ。

 

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あー、今度は昔ながらの中華そばが食いたくなってきた。

 

 

 

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