DONZOKO

秘境へようこそ

海岸通とコートと写真

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神戸には海岸通というシャレオツスポットがある。南京町を少し南下した辺りだ。今日は気分が乗っていたので、昼は松屋なぞ食わんで、海岸通の洒落たカフェでキッシュを食い、スコーンを食い、コーヒーを飲もうと決めた。

 

神戸でオシャレなカッフェやら服屋が密集しているところというと、トアロードが有名だが、個人的には海岸通の方が好みである。というかこの界隈は「海岸通」と呼んで正解なんだろうか。調べると「乙仲通り」とか「栄町」とか色々出てくる。よく分からん。アジカンが好きなので海岸通でいかせてもらおう。

 

トアロードに比べると色彩が落ち着いていて灰色がかっているが、なんかそれがいい。大阪の船場っぽい雰囲気がある。

 

元町駅で降りたほうが早いのだが、三宮から元町方面まで歩く道が好きなので一つ前で降りる。特にセンター街を抜けてから大丸前まで辺りの通りが好きだ。無印が入っている「BAL」というビルの横の通りがオススメだ。「西の代官山」と勝手に呼んでいる。

 

目的地に着く。歩いている人々がやたら洒落ている。千鳥柄着てる女の子っていいよね。映画『勝手にふるえてろ』の松岡茉優のファッションが好きだ。可愛い。というか松岡茉優がかわいい。話が逸れるが、あの映画で松岡茉優演じる主人公ヨシカに猛アタックする二という男がいる。二を演じているのは渡辺大知という人なのだが、黒猫チェルシーのボーカルだと最近知って驚いた。ちなみに黒猫チェルシーは神戸結成のバンドだ。

 

松岡茉優が好きすぎて日夜どうやったら会えるかを考えている。全国のアイコスショップを周るか、ロケ地を隈なく探すか、モー娘。のライブにいってアイドルそっちのけで観客席を虱潰しにあたるか。こんな方法では到底会えないだろうが、上記のバンドの件を知ってからというものの、「白猫リヴァプール」とか「三毛猫アーセナル」とかいう名前のバンドを組んでボーカルをやるのが良い気がしてきた。

 

バカなことを考えながらカフェを探す。アンセム、という名前のカフェだ。窓際の、自然光が入る木目調の素朴だが美しいテーブルで、一眼の暴力みたいな写真が撮りたかった。暴力的な写真を撮るには技術とカメラのスペックが足りない。否、俺の技術が足りんのだ。道具のせいにしてはいけない。d5200はわるくないの!

 

あった。雑居ビルの4階だ。「階段ではお静かに」の張り紙を見ながら、忍び足で4階まで上る。

 

ドアを開ける。やってますかァ!?

 

激込みである。3連休初日とあって覚悟はしていたが。一時間とちょっと待てば入れそうな気がしたが、女性客ばかりの中、30代無職みたいな顔をした陰気な男が90分も鎮座していては店内の雰囲気がブチ壊れる。TPOという言葉が瞼の裏をシャトルランのごとくチラつく。仕方がない、また今度にしよう。悔しさの表明として、店名にちなんでチャンピオンズリーグアンセムを分かりもしない英語仏語独語で熱唱しようと思ったが、思っただけで実行はできなかった。

 

カフェという所は男一人では入りにくいのが世の常だ。自分にはこういうセピアがかった瀟洒なカフェより、薄暗くて、皿洗いの音がガチャガチャと聞こえる、天井の隅にクモの巣が張った喫茶店の方が似合っている、気がする。梅田の阪急三番街にある山本珈琲店のイメージだ。あそこの珈琲は美味い。

 

とはいえは偶にはスコーンをかじって御洒落人間の真似事をしたかった。残念だ。陰気な男が更に陰気になって海岸通を練り歩く。急に通りを歩く人々が自分を監視している気がしてきた。我々の聖域たる社交場、アンセムに無職の男が入ろうとしていた、手汗で湿ったこれまた陰気臭いカメラで我々を盗撮しようとしていた、とか通報されたりしないだろうか。家に帰った途端に秘密警察が押しかけてきて連行。そのまま拘置所に入れられ、白い塗装が剥げた背もたれのない椅子に座らされ、縄で手を後ろで縛られ、血に濡れた麻袋を被せられヘッドフォンで数多の人々の叫びを合成させた拷問音声を聞かされたりしないだろうか。ここは東ベルリンではなかったか?

 

うん、煙草を吸って落ち着こう。白と緑と青の看板がトレードマークの、某親しみやすい商店、a.k.aファミリーマートの喫煙所に向かう。ここのファミリーマートはとんだお洒落界隈にあるというのに、珍しく喫煙所が思いっきり通路に面して設置してある。若い女性がおっさんの吐いた煙を被って迷惑そうにして通り過ぎる。これ絶対クレーム多いだろ。岡本にあったコンビニの喫煙所も、綺麗な通りなのに珍しいところにあるなぁ、と思っていたら数か月後に撤去されていた。ここも近いうちになくなるだろう。「靴に使われている素材が来月から変更になります」とかいうアナウンスがメーカーからあると、急に現行の素材を有り難がって爆発的に人気が出ることがある。喫煙所も同じように、撤去されると決まれば急に人気が出たりするんだろうか。もしそういう奇矯な趣味をお持ちの方がいれば、一刻も早く海岸通のファミマに駆け込んだほうがいい。

 

通行人に煙かからないように、駐車場の奥に行って煙草を吸う。バイト先の近くにファミリーマートがあって、タバコを買うたびにTポイントを貯めるのが楽しみだった。最近になって煙草はポイント付与の対象外ということを知って絶望した。やってらんねえな、禁煙しよう。

 

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陰気な気分で撮ったのでとびきり陰気な写真になった。実際はもっと楽しそうな通りだから安心していただきたい。

 

このまま帰っては北向き物件の仄暗い部屋で、鉛色のゲル状物体に溶けてしまいそうな気がしたので、古着屋にでも行くことにした。

 

「a day in the life」という店がある。イギリス物ばかり集めた珍しい古着屋だ。イギリス好きが高じてお店を始めたというお兄さんがやっている。気さくに話しかけてくれて好きだ。セレクトショップとかによくいる、「売りつけたろ」という魂胆が丸見えの怖い店員のような感じが全くなくて気軽に服が見れる。英国好き(行ったことがないのがダサい)としてはこういうイギリスに全振りした古着屋は非常にありがたい。映画『裏切りのサーカス』でコリン・ファースが着てるコーデュロイのコートとか格好良いですよ、とか話しながら店主おすすめのコートを見せてもらう。

 

今年はアウターは見送るつもりだったが、寒さに耐えかねて買った。何よりヴィンテージのエゲレスのコートがカッコよかった。記事の先頭に貼った写真がそれだ。それの袖だ。柄が良い。気分が良くなった。買ったコートをそのまま着て店を後にする。監視社会は崩壊していた。通りを往く親愛なるご同胞の皆様、ごきげんよう。今日は何用で此処までいらっしゃったのですか?ほう、旧居留地に観光ですか。ここから少し東に行ったところですよ、良かったらご案内して進ぜましょう。え?写真を撮ってほしい?オフコース、オフコース、ガハハ。カシャー

 

ああ気分がいい。今日は海までいっちまおう。

 

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川崎重工。クレーンがでかい釣り竿に見える。ナガスクジラでも釣り上げる気だろうか。ヤンチャなバイクを作るだけあって釣りもヤンチャだ。

 

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船を撮るのは好きだ。鹿児島の離島、鄙びた漁村を撮りに行きたい。長島とか。

 

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いつぞやの奴隷船ではないか。僕は二度と乗らんぞ。

 

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港はカラフルで楽しい。イタリアのブラーノ島はカラフルな街並みで有名だが、沖へ出たフィッシャーマン達が霧の日や夜遅くでも自分の家が分かりやすいように、という理由であれほど鮮やかになっているらしい。この何に使うか分からない道具たちも同じ理由で塗料をぬったくられたのだろうか。

 

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お役御免になったチャリ。何故そこに配置されることになったのか気になる。

 

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人の好みは不思議なもので、コートを買って気分が高揚していても、何というか、ふわっとしたような、綺麗なところを撮る気にはならない。例えばモザイクとか。もっとゴミゴミした汚いところの方が見ていて面白い。濁った海面に浮きまくるゴミ。生臭い。こういうのがいい。たぶん性格の根っこが捻くれているからだ。Appleよりandroid、任天堂よりソニー、キャノンよりニコン、染料インクより古典インクが好きだ。たぶんテーマパークの類いにカメラを持っていくことはない。性格なので仕方がない。

 

あー、でも最近ずっと苦手だった小型犬が可愛く思えてきたな。特にトイプードル。案外おっさんになったらミッキーの耳を付けて満面の笑みでパレードを撮影していたりするかもしれない。そんな自分を想像してみるとだいぶキツいものがあるが。船長エイハブも四分儀に対して「水の一滴、砂の一粒が明日の正午にどこに位置しているかも分からん玩具め、お前はお高くとまった船長やら提督の慰み者だ!呪われろ!」と航海に必要な道具を破壊しながらキレ散らかしていたではないか。明日のことなど誰にも分からないのである。

 

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とか思っていたら、ルミナリエの電飾が準備してあって、キャッキャうふふ言いながら写真を撮った。やっぱり未来のことは分からない。いや、別に嫌いではないのだこういうのは。たぶんディズニーだって行けば楽しいし、たまに入るスタバは美味いし、俺だって並ぶためにパンケーキを食いたい。行くだけなら、食うだけならいいのだが写真に撮るとなるとコイツらは途端に難しくなるのである。ミッキーが狂犬病に罹患したプルートに襲われ、臓物をまき散らされ、スタバの新作は全くカラフルでない、カドミウムでも入っているのではないかというような色合いに変わり、ふわふわのパンケーキは「うん、なんかコレ、小麦焼いたやつだね」とでも言われそうなパサパサした中世ヨーロッパ庶民がその日の飢えをしのぐためだけに食べるパンのような様相に成り果てる。

 

なんであんなにファンシーなものは撮るのが難しいのか。女の子に「写真を撮ってほしい」と言われたときほど気が進まないことはない。ほとんど言われたことはないが。申し訳ないのだが全然綺麗に撮れない。女性は悪くない。私が悪い。ヒョードル・カラマーゾフは「儂にいわせりゃ、不細工な女なんてのは存在せんのだ、誰しもひとつは光るものを持っていて、それを探し当てることが出来れば途端に魅力的に見えてくる。俺はいつだってそうしてきた」みたいなことを言っていた。目で見れば太陽のように眩しい方々がカメラを通すと、「あの、すみません、こんなつもりじゃなかったんですが」ってなことになる。今度から撮ってほしいと言われたらsnowで撮ろう。

 

自分の写真を一眼で綺麗に撮ってほしい女性がいたら、同じ女性に頼むと良い。フワっとファンシーでシュガーに仕上げてくれるはずだ。男に頼む場合は注意したほうがいい。頼むとすれば、そうだな。流行りのパーマをかけて、金属フレームの丸メガネ、首元にはバンダナ、コモリだかオーラリーだかヤエカだか、とりあえずその辺のテイストのブランドのジャケットを羽織り、ワイドパンツを履き、ドクターマーチンか毛でモフモフのパラブーツを履き、「休日はジャムを作ってます」とか言い出しそうな、ペンタックスかキャノンを持っている慇懃な男に頼むと良い。たぶんイイ感じに撮ってくれる、知らんけど。

 

それとは逆に、煙草を吸っているヤニ臭い大学生、工事中のおっさん、客が来るのもおかまいなしで店の奥に引っ込んでよく分からん雑誌を読んでいる元高のジジイとかは不思議と絵になってしまう。なんなのか。俺のカメラはホモAIでも搭載しているのか。

 

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ルミナリエの準備をする外国人技師たち。作業が終わるたびにいちいちハイタッチをしていて外国を感じた。カッコいい。

 

頑張ってください。