DONZOKO

辺境

宗教勧誘なのか何なのか

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写真は先日作ったスープカレー。今まで作ったカレーの中で1番美味かった。

ふと大学時代の話を思い出したので書いてみることにする。

確か大学3年の秋頃だった。私は学業に対して全く怠慢だったので、3年生になってもフレッシュマンがわんさかいる教養・語学系の授業が行われるキャンパスに巣食っていた。その日は単位を取りこぼしたドイツ語の授業だったことを覚えている。

自分と同じくドイツ語学習にさして興味が無い経営学部の後輩連中がとっている授業だと思い込み、「おじさんは単位落としちゃいましたぁ~、皆はこうならないように気をつけるんだゾ」というようなテンションで臨んだ。

教室に入ると女性比率がやけに高く、老け顔の私は明らかに浮いていた。何かが間違っている気がする。隣の席の女子に「失礼ですが学部はどこですか」と尋ねると「国際文化学部」だと返ってきた。しまった、と思うと同時に教授が入室。授業の進行方法について説明が始まる。4人1組で、ドイツ語でコミュニケーションを取りながら進めていく、ということだった。最悪だった。

語学能力が高く、留学率も高い彼女達にしてみれば素晴らしい授業内容のはずだが、適当に出席し、過去問を入手してとりあえず「可」が貰えればいいと考えていた私には高度すぎる内容だった。

私以外の3人はドイツ語がペラペラの女子だった。地獄のセッションが始まった。3人が格変化だの名詞の性別だのを駆使しながら難なく会話する中、私は「イ、イッヒ」「イ、イッヒ」としか発言していなかった。何度か授業を重ねる内に、彼女達の間で、私は「運悪く迷いこんでしまった可哀想なおじさん」であるという共通認識が出来上がっており、ありがたいんだが若干心にチクリと来る気遣いを受けながら授業をこなしていくのだった。

タイトルと話の方向が大いに逸れた。申し訳ない。そんな気遣われセッションの初日、テンション低めに帰路についていると、大学構内でとある女性2人組に声をかけられる。(以下、その2人をA、Bと呼称する。)なんでも、「ゼミの研究でアンケートを行っているので協力して欲しい」ということだった。90分間「イ、イッヒ」としか発していない私は母国語で話せることに気を良くして快諾した。

アンケート内容はうろ覚えだが、「次の4つの中から関心のあるテーマを選んでください」というものだった。私はその中から「将来AIによって人間の仕事が奪われる」というテーマを選んだ。声を掛かられたのが工学部の近くだったので、「AIの研究でもしてのかな」と、それらしいテーマを選んだ記憶がある。それを選んだ後、「選ばれたテーマごとに詳細な質問をしていきたいので連絡先を交換しないか」との申し出があり、これもあっさり了承した。

この後、数ヶ月に渡る、ドイツ語地獄セッションならぬ、謎の生き方講座セッションが始まった。

初の接触から、3日ほど経ったタイミングで、Aから都合のいい日に家に来て欲しいと連絡があった。てっきり研究室かどこかで質問されるのかと思っていた。まあいいかということで了承。この時点で全く警戒はしていなかった。我ながら危ない。ちなみにこの後はほとんどAとやりとりしていくことになり、Bはあんまり出てこない。

約束の日に指定された家に行くと、A、Bの他に男性C、女性Dの2名がいた。どちらも年齢は同じくらいに思えた。彼らから見れば私は30代に見えていただろうが。

そこで例のAIについてのアンケートが始めるのかと思いきや、Aが「みんな今日は集まってくれてありがとう。みんな同じような不安を抱えていると思うから、私から何か参考にできる話が出来ればいいんだけど...」というような前置きがあり、お悩み相談会が始まってしまった。

A、B、C、Dは同じゼミのメンバーかと思ったが、話の流れからそうではないことが推測された。Aが話を聞き、Bがそのサポート役、私を含めたC、Dの3人が悩める子羊、ということなっていた。CとDが人間関係が上手くいかないだの、就職先に迷っているだの割と真剣な悩みを話す中、私は「ドイツ語が理解できないんですよね」と素っ頓狂なことを話してしまった。

Aは一通り悩みを聞いた後、「そんな皆に覚えて欲しいのが仏教の考え方なんだよね」と、「決して勧誘などではなくあくまで学術的な話」と注釈をつけながら仏教の話を展開していった。

はあ、へえ、ほお、と言っていたらセッションも終わりかけ、唐突に「で、君は次いつ参加できるの?」とさも当然のように聞かれ、「続くのかよこれ」と思いつつも断りきれず、次の予定を押さえられてしまった。

2回目のセッションにはA、B、Cの3人がいた。これ以降Dをみることはなかった。今日も仏教のありがたいお話か、と思っていると、Cのプレゼン練習をさせてくれという話になった。ころころ変わるもんである。というか仏教トークに始まり今度はプレゼン練習ってコイツら何の集まりだ、とこの辺から警戒心が芽生える。遅い。

Cは「初めてのプレゼンなので、1番話しやすい地元のことをプレゼンしたい」と前置きし、パワポを起動した。Cの地元は奈良のとある宗教都市、と言ったところでほとんど分かるので明記するが、天理市であった。「あちゃーやっぱ勧誘だったかあ」と思っていたが、意外にも宗教のことには全く触れず、実は高校野球が強豪だとか、天理ラーメンがうまいだとか、鶏のいる神社だとか、本当にただの地元紹介だった。天理といえばその名の通り天理教だと思うのだが、不自然なくらいにその話題は出てこなかった。

3回目以降はひたすらAとマンツーマンで仏教の話をしていた。確かに勧誘されるようなことはなかったし、Aは中々の話上手で単に聞いていて面白かったのもあって10回以上セッションしたと思う。私にとっては週に1回、そこそこ面白い話を茶菓子と共に聞けるイベントになっていた。

勧誘云々より気味が悪かったのは、Aの素性が全く知れないということだった。あくまで学術のため、と言いながらもやはりいきなり宗教の話をするのも心象が悪いもんだから、工学部のゼミのアンケートを装った仏教オタクの文学部生かと推測したが、Aは学生でも卒業生でもないようだった。分かったのは学生ではないこと、部屋には同居人と住んでいること、地元は北陸であること、服好きの友達にたまに服を貰うこと、くらいだった。

大学生なのか?とか仕事は何をしているのか?と聞いてもはぐらかされる一方だった。Bも大学生かどうか怪しい。

目的も謎だったし、Cの地元が天理であることとAの仏教好きに関連があるのかも分からずじまいだった。

2月頃に、Aから「訳あって地元に帰らないといけなくなった。後はBに引き継ぐので連絡をとってほしい」という話をされた。就活も本格化する時期だったし、急に面倒になったので、私はAもBもブロックして一切の連絡を絶った。

特に怖い思いもしなかったが、あの集まりは一体何だったのだろうか。たぶん勧誘ではないのは本当だったと思う。10回以上会ってもそんな話は出てこなかった。あくまでも、仏教の考え方の紹介、というスタンスは守られていた。おすすめ商品も株も出て来なかったのでネットワークビジネスでもない。

素人推理では、Aは寺の娘か何かで、地元で恋人と交際していたが、恋人が関西に転勤→Aは恋人について行くも、友人もおらず暇なので、SNSで趣味の仏教アカウントを作成、Bと知り合う→仲間を増やしたいが、特定の宗派に属しているわけでもないので、参考程度に聞いてくれる人が欲しい→近所に大学あるやんけ!→私が捕まる→A、恋人と破局。関西にいる理由がないので地元に帰る。Bが後任。
というような具合ではなかろうかと思っている。

特にオチがなくて申し訳ない。怖いもの見たさでもっと危険な香りのする勧誘イベントに参加してレビューとか書きたいが、流石にちょっと気が引ける。